正直、『海辺のカフカ』『アフターダーク』と最近のやつはちょっと僕的(って何)にはいまいちピンと来てなかった村上春樹の短編集、『東京奇譚集』読みました。ていうか村上春樹本人は『若い読者のための短編小説案内』の中で「自分は長編を書くのが好きだし合ってると思う」って書いていたような気がするんだけど、僕は短編のほうが好きです。『神の子たちはみな踊る』とか。『カフカ』『アフター…』は長編と言うには中途半端な長さだと思ったし(「中篇」という感じ)、実際内容も中途半端に感じたのでした。『世界の終わりと…』とか『ねじまき鳥…』くらいの長編(あるいは大長編)になるととてつもなく良いんだけど。
で、この短編集。僕は面白いと思いました。ひとつひとつは、まぁ面白かったり、ちょっと微妙だったり、不思議な読後感だったりっていう思いを持つんだけど、そいつらがまとまって一冊になっているっていうのが好きなんですね。
タイトルは「奇譚集」とか言って、近くでおこっているかもしれない不思議な話、みたいなニュアンスの事書いてますけど、実際の内容はいままでの村上ワールドとなんら変わりないわけです。「なんら」っていう言い方は失礼かもしれないけど、でもその不思議な「奇譚」具合が保たれてるのが面白いワケで。
この前のブルース・ウェーバー特集のBRUTUSで誰かが「ウェーバーは写真も凄いんだけど、それを写真集にするときの組み方というかエディット能力がこれまた凄い」みたいなことを書いてて、短編集もそんな感じなんじゃないかと思った。載せる話の選び方とか並べ方とか。そのへんの気の利かせ方とか、加減が面白いなぁ、と。音楽アルバムの場合、CDとか最近の音楽メディアだとシャッフルしたりとか飛ばすとかいうことが簡単にできるようになっちゃって作者の意図する流れが必ずしも反映されないようになってきているけど、本の場合はまだ、大抵先頭から読むことになっているから、その辺の流れをうまく使えるのが短編集だと思うし、その流れがとても小気味よく感じるから村上春樹の短編集が好きなんだろうと思います。
今日の一冊:東京奇譚集/村上春樹
posted by tsukada at 18 / 09 / 2005 02:54