ふとした理由で名古屋にいたんだけど、たまたま名古屋市美術館で荒川修作の展示をやってるっていうのでフラリと行ってみた。
荒川修作に関しては『養老天命反転地』くらいしか実は知らなくて、しかもそれも「なんだか凄い」くらいのよく分かんないイメージしか無かった。愛知県の作家ということも知らなかった(今はNY在住だけど)。この展示は「解読する」というタイトルの通り、展示作品ごとに解説書が付いていて、それぞれの作品の制作の背景やコンセプト、作品の中のパーツひとつひとつの意味などをいちいち細かに「解読」していて、なかなか興味深かった。
「アート」と呼ばれるものをいちいち解説されるのはウザいけど、ここでは「解読」してみるという試み。荒川の作品に関しては、ものすごくいろいろな意味が込められているようなので、「解読」はとても役立った。もちろん「解読」にばかり頼るのは良くないことなんだけど。あくまでも脳の体験を補完するための「解読」という感じ。
ていうか、荒川みたいな「意味」をどんどん突きつめていく作家を「解読」していくのは、彼の意識の移り変わりを追体験するという点でとっても面白かった。ここでの展示は初期のものから「図式絵画」と呼ばれる作品、建築に至る直前までの作品群なんだけど、彼がこの後どうして建築に行ってしまったのか(行かなくてはならなかったのか)、どうして『養老天命反転地』に至ったのか、その大きくゆるやかな流れが見えてきて面白い。
ひとつひとつの作品は、それこそものすごい意味が詰まりまくっていて、(実際にテキストが書き込まれているからかもしれないけど、それはパートナーであるマドリン・ギンズに依るところが大きいと思う)哲学的な対話が、しかも几帳面で計算され尽された構成で作られていて、ピリピリとした緊張感を醸し出してた。ホント、『養老…』しか知らなかった僕としては、あの肉体的で感情的なある種のハプニングみたいなモノとは対極にあるストイックな感じが新鮮だったのと、アレへと至る意識がここに内在しているということが感じられただけで十分価値があった。
ということで、時系列で作品の流れを「解読」し興奮した僕は、イキオイ余って『養老天命反転地』に向うのであった。。。(つづく)
今日の1冊:建築する身体—人間を超えていくために/荒川修作+マドリン・ギンズ