先日の『ダブリン市民』の後、『若い芸術家の肖像』を経由して読みはじめた『ユリシーズ』。とりあえず1巻目を読了。とにかくこのハナシ、メチャメチャ面白い。
簡単にあらすじを説明すると、(いちおう)主人公ブルームが、ダラダラウロウロとダブリンの街を日常のように歩くだけの話、みたいな事が良く言われているけど、でもまったくその通り。
とはいうものの、文庫4巻ぶんもの文章量。「意識の流れ」とか言われている表現手法みたいなもんで描かれているんだけど、それがものすごく面白い。もう、脳内独白垂れ流し、みたいな感じ。
ブルームの目に前の現実に対しての言動、そのモノに対する思い、さっきまで思い出せなかったコト、ふとひらめいたダジャレ、オペラ、聖書の引用、などなどとにかく思ったことをダラダラいちいち書き記すことで、状況がいきいきと描かれ、ダブリンの一日が僕の脳内にリアルに再現されていく(行ったことないけど)。
だいぶ前に、小説の登場人物のセリフは全部ウソっぽく感じて「実際そんな喋り方しねーよ」とか「そんなアタマいいこと言えるかねしかし」とか勝手にツッコミしてた。ドラマとかテレビとかでもそうで、演技はさておきセリフに関しては「言わされている感じ」がして、とてもイヤだった。僕らの日常会話なんて、他愛のない会話がどんどん展開して、最初に言いたかったことって何だっけ?みたいなことだらけなのに。
だから『パルプ・フィクション』で殺し屋がマドンナの話したり本編と関係無い(ような)話をダラダラしているっていう、そういうのは絶対アリ、タランティーノ万歳!とか思った。
でもこの話では、セリフの何倍もの量の、ほとんどひとりの独白でできあがって行く話なので、さらに余計なものがバンバン出てくる。もともと『オデュッセイア』をベースにしているとかパロディとかいう話で、それを踏まえるとより理解できるし深く楽しめるようになっているし、ダブリンの内輪ネタとかあちこちの引用なんかも入り混って、もはや言葉のデパート、引用の総合商社(安易で貧弱な比喩表現)。本の後半40%を占める注釈の内容もちゃんと理解しようとすると大変なことになる。実際問題、僕は『オデュッセイア』と『聖書』をこれから読む気になってますけど。でもまだまだ足りない。ジョイスにハマって行ってますね。
でもそこまで深くハマらない現状でも、単純に「意識の流れ」によって生まれてくる言葉の面白さと心地良さに浸るだけでもじゅうぶんに面白い。実際笑っちゃうし。随所に滲み出てくる「くだらねーコイツ」っていう感情が、いつのまにかブルームを愛すべき人物に仕立てあげているのだった。
今日の1冊:ユリシーズ〈1〉/ ジェイムズ・ジョイス