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ダブリン市民 / ジェイムズ・ジョイス

今日、天野一家がダブリンに引越した。かつてはPENTAGON YEBISUでシェアオフィスしたりして楽しかった。ダブリンなんて近いからそれほどさみしくもないのだけど、明日酒飲もーぜ、とか、クルマでサックリ出かけよーぜ、なんてワケにいかないのが辛い。

天野が(とりあえずの)海外移住先をダブリンにするって決めたのとほとんど同じくらいに『ダブリン市民』を読み始めた。ジョイスはかつてハードカバーの柳瀬訳『フィネガンズ・ウェイク』の出版当時に飛び付きながら数ページで挫折、近頃文庫版で再登場したのを再度トライするも「いきなり柳瀬訳の最上級レベルから入ってはマズかろう」と『ユリシーズ』を柳瀬訳完訳とカジったものの「やっぱしジョイスを初期の作品から読んでいったほうがいいカモね」と思い直したのだった。ここまで来るのに既に長い。


この短編集は、ひとつひとつの登場人物が老若男女どれも最後には「あーあ」とか「あちゃー」とか「マジかよ。。。」とか思わず声に出てしまうようなミジメな終わり方で、軽いガックリとした感じを味わうことになる。虚脱感とか絶望感、というよりはガックリ感、といったほうが正しい。

実際、登場人物には相当重いガックリな話ではあるのだけど、それを心地よいガックリ感に思うのは、他人の不幸だから、という理由ではなく、どの話でもいろいろな形容を使って飽きさせずにひとりひとりの人物をテンポよく丁寧に描いているからかもしれない。文章を読むにつれてストーリーはもちろん、その人物の心情、性格などが、また身なりやしぐさや背格好や生い立ちや宗教や政治関心などが小出しにじわじわと滲み出てくる。その描写がいちいち気が利いていて心地よいのであった。

たぶん日本語訳も直訳に近いカタチで訳されているようなので、英語版の原文と照らし合わせてみてもひとつひとつの単語がけっこうマッチして面白かったりする。原文ついでについついギネスビールの栓も開けてしまったりすると心地よさが増す。ただし飲みすぎると別のガックリ感が湧きおこるので注意が必要。

posted by tsukada at 16 / 02 / 2005  23:43
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